専門家に依頼するメリット

遺言書作成を専門家に依頼することで、さまざまなメリットが得られます。まず、法的に有効な遺言書を確実に作成できます。専門家は法律知識を持ち、無効になるリスクを抑えます。次に、相続人間のトラブル回避に貢献します。曖昧な表現や法的不備による遺言書の無効を防止し、相続人間での紛争リスクを大幅に軽減できるのです。

また、複雑な家族構成や財産状況に応じた適切な内容作成が可能になります。相続税対策の観点からも最適な財産分割方法の提案を受けられます。遺言執行者の指定など、円滑な遺産分割を実現するための細やかなアドバイスも専門家ならではの強みです。

適切な専門家の選び方

遺言書作成を依頼できる専門家には、主に行政書士、司法書士、弁護士などがあります。専門家を選ぶ際は、まず相続・遺言分野の実績があるかどうかを確認しましょう。実績豊富な行政書士であれば、遺言書作成を効率的にサポートしてくれます。

料金体系が明確かどうかも重要なチェックポイントです。事前に料金について質問し、明確な回答が得られるかどうかで信頼性を判断できます。費用面では行政書士が比較的リーズナブルで、シンプルな遺言書作成に適しています。

遺言書は一度作成して終わりではなく、状況の変化に応じて見直しが必要になることもあります。長期的なサポート体制が整っているかも確認しておくと良いでしょう。依頼者の意向や背景事情を丁寧にヒアリングし、法的手続きだけでなく感情的側面にも配慮した対応が期待できるかどうかも、満足度の高い遺言書作成には欠かせない要素です。

法的要件を満たすための基本ルール

自筆証書遺言を作成する際の最も重要なルールは、財産目録を除き、全文を自筆で書くことです。財産目録以外の箇所をパソコンで作成することや、一部だけを自筆にするといった方法は認められません。日付も年月日を明記し、氏名は戸籍に記載されているとおりの漢字で書き、必ず押印しなければなりません。これらの要件を一つでも満たさないと、せっかく作成した遺言書が無効になってしまいます。

内容は誰が見てもわかるように明瞭な字で書きましょう。相続人に自分の思いを正確に伝えるためにも、読みやすさは非常に重要です。また、複数枚にわたる場合は、各用紙に署名押印するか、ホッチキスで綴じて契印（割印）を押すと安心です。

財産の明確な記載方法

遺言書の主な目的は財産の分配を明確にすることです。不動産の場合は、登記簿に記載されている、所在、地番、地目、地積や、建物なら家屋番号などを正確に記載しましょう。不明瞭な表現は避け、登記簿に従い具体的な表記で記載することがトラブル防止につながります。

預貯金については、金融機関名、支店名、口座種類、口座番号を明記します。株式や債券なども同様に、具体的に特定できる情報を記載することが重要です。

修正と保管の正しい方法

遺言書に誤りがあった場合、修正する際にも注意が必要です。法律上は二重線で消して訂正印を押し、遺言所の空いた箇所に訂正した内容を書いて署名する方法をとりますが、修正が多いと遺言の効力自体が疑われる可能性があります。重要な誤りがある場合は、書き直すことをおすすめします。

作成後の保管も非常に重要です。自宅での保管が一般的ですが、火災や紛失のリスクがあります。近年は法務局での「自筆証書遺言保管制度」も利用できるようになりました。また、相続人に遺言の存在を知らせておくことも大切です。

自筆証書遺言は、正しい知識で作成すれば有効な法的文書となります。しかし、少しでも不安がある場合は、専門家へ相談することをおすすめします。思いを確実に伝えるための大切なツールとして、正しく活用しましょう。

遺言書が見つからないという事態

最も多いトラブルの一つが、遺言書が見つからないというケースです。自宅で保管していた遺言書が、整理や引っ越しの際に紛失してしまうことがあります。また、火災や災害で失われることもあります。こうした事態を防ぐためには、遺言書の保管場所を家族に伝えておくか、法務局の自筆証書遺言保管制度を利用するという選択肢があります。自宅で保管する場合は、耐火金庫を使用するなどの工夫も有効です。

遺言内容の不明確さによる紛争

遺言書の記載内容が不明確であると、相続人間で解釈が分かれ、紛争に発展することがあります。たとえば「私の財産を長男に相続させる」という表現では、どの財産を指しているのか不明確です。これを防ぐには、財産の特定を確実に行い、具体的に記載することが重要です。

法的要件を満たさない無効な遺言

自筆証書遺言の場合、財産目録を除き、全文自筆・日付・署名・押印という法的要件を満たしていないと無効になってしまいます。とくに日付の記載漏れや、財産目録以外の箇所をパソコンで作成するといった行為は無効の原因となります。これを防ぐためには、作成時に法的要件を再確認するか、専門家のチェックを受けることが有効です。

遺言執行者不在によるトラブル

遺言執行者が指定されていない、または指定された執行者が辞退した場合、遺言の実行が滞る可能性があります。とくに相続人間の関係が良くない場合、遺言内容の実行が進まないことがあります。対策としては、信頼できる人物を遺言執行者として指定しておくことが大切です。

遺言書は、作成時の注意点だけでなく、作成後のトラブル対策も考慮して準備することが、円満な相続につながります。少しでも不安がある場合は、専門家への相談を検討してみてください。